おひとり様の相続手続き完全ガイド|亡くなった後の手続きと備え方
おひとり様が亡くなった後、誰が・何を・どの順番で行うのか。相続人がいない場合の流れや、生前にできる備えをわかりやすく解説します。
おひとり様の相続は「誰が動くか」が最大の問題
「自分が亡くなった後のことは、残された人が何とかしてくれる」——家族がいれば、そう考えることもできます。しかしおひとり様の場合、亡くなった後に動いてくれる人が最初からいないケースも少なくありません。
配偶者も子どももいないおひとり様の相続は、手続きが複雑になりやすく、場合によっては財産が誰にも渡らないまま国に帰属してしまうこともあります。
「自分が亡くなった後に誰が動くのか」「財産はどこへいくのか」——これを生前に把握し、準備しておくことがおひとり様の終活でもっとも重要なステップのひとつです。
法定相続人とは何か
相続の手続きで最初に確認すべきなのが「法定相続人」です。
法定相続人とは、民法によって定められた「財産を受け取る権利がある人」のことです。遺言書がない場合、財産は法定相続人に対して法律で決まった割合(法定相続分)で渡ります。
法定相続人になれる人の優先順位は次の通りです。
| 順位 | 相続人 | 備考 |
|---|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 | 婚姻関係にある配偶者のみ(内縁は不可) |
| 第1順位 | 子(またはその子) | 養子も含む |
| 第2順位 | 父母・祖父母 | 子がいない場合 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(またはその子) | 子も父母もいない場合 |
おひとり様の場合、配偶者も子もいないことが多いため、父母が存命であれば父母が、父母も亡くなっていれば兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人となります。
相続人がまったくいない場合はどうなるか
両親もきょうだいも亡くなっており、法定相続人が誰もいない場合、財産はどうなるのでしょうか。
この場合、家庭裁判所によって「相続財産清算人」が選任されます。清算人は財産を管理・換金し、未払いの債務を精算した後、残った財産は最終的に国庫(国)に帰属します。
長年お世話になった友人や、応援したい団体に財産を残したくても、遺言書がなければその意思は実現しません。だからこそ、おひとり様には遺言書の作成が強く推奨されます。
相続手続きの流れ
おひとり様が亡くなった後、一般的にどのような手続きが必要になるかを確認しておきましょう。
ステップ1:死亡届の提出(7日以内)
亡くなってから7日以内に、市区町村役場へ死亡届を提出します。死亡届には、医師が発行する「死亡診断書」が必要です。届出は同居の親族や同居人のほか、施設の管理者でも行えます。おひとり様で入院中や施設入居中の場合は、病院・施設のスタッフが対応してくれることがほとんどです。
ステップ2:相続人の調査(死亡後なるべく早く)
誰が相続人になるかを確定するため、亡くなった方の戸籍謄本を出生まで遡って収集します。これは「法定相続情報一覧図」の作成にも使われます。
おひとり様の場合、この作業を担う人がいないため、生前に死後事務委任契約を結んだ専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)が対応することが多くなります。
ステップ3:遺産の調査・財産目録の作成
預貯金・不動産・株式・生命保険・年金・負債などをすべて洗い出します。特にネット銀行や証券口座は通帳がないため、生前にエンディングノートに情報を書き残しておかないと見落とされるリスクがあります。
相続人が判断能力を失っている場合などのために、委任された専門家が代わりに照会する手順が必要です。
ステップ4:遺言書の確認・検認
遺言書が残されている場合は、その内容に従って手続きを進めます。自筆証書遺言(法務局保管以外)の場合は、家庭裁判所での「検認」が必要です。公正証書遺言であれば検認不要で、すぐに手続きに移れます。
ステップ5:遺産分割・各種手続き
相続人がいる場合は遺産分割協議を行い、合意のうえで財産を分けます。不動産は名義変更(相続登記)、預貯金は金融機関での解約・払戻し手続きを行います。
相続税の申告が必要な場合(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数を超える場合)は、死亡後10か月以内に税務署へ申告します。
生前にできる3つの備え
おひとり様の相続を「誰でも動ける状態」にするためには、生前の準備が欠かせません。特に重要な3つの備えを紹介します。
備え1:遺言書の作成
遺言書があれば、財産の行き先を自分で決めることができます。法定相続人がいない場合でも、友人・知人・NPO・慈善団体などに財産を残すことが可能です。
おひとり様に特におすすめなのは公正証書遺言です。公証役場で公証人が関与して作成するため、形式的なミスで無効になるリスクがなく、家庭裁判所の検認も不要です。原本は公証役場が保管するので、紛失の心配もありません。
備え2:死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、亡くなった後の実務手続きを、生前に信頼できる人(または専門家)に依頼しておく契約です。
依頼できる内容には次のようなものがあります。
- 死亡届・各種行政手続きの代行
- 葬儀・納骨の手配
- 自宅の片付け・遺品整理
- 銀行口座の解約・光熱費の精算
- SNS・メールアカウントの削除
契約の相手は、弁護士・司法書士・行政書士などの士業のほか、NPO法人や死後事務専門の会社もあります。費用は50万〜100万円程度が目安です。
備え3:任意後見契約
任意後見契約とは、将来自分の判断能力が低下したときに、財産管理や医療・介護に関する手続きを代わりに行ってくれる人(任意後見人)をあらかじめ指定しておく契約です。
判断能力があるうちに公証役場で契約を結び、実際に判断能力が低下したときに家庭裁判所で「任意後見監督人」が選任されてから効力が発生します。
認知症などで自分で判断できなくなった後も、希望する方針で財産・医療・介護の管理を続けてもらえるため、おひとり様にとって非常に心強い制度です。
まとめ:生前の準備が「亡くなった後の混乱」を防ぐ
おひとり様の相続でもっとも困るのは、「誰が・何をすべきかわからない」状態に陥ることです。
遺言書・死後事務委任契約・任意後見契約の3つを組み合わせることで、亡くなった後の手続きを「動ける人がいる状態」にしておくことができます。
どれか一つから始めるとすれば、まずは遺言書の作成です。財産の多い少ないに関わらず、自分の意思を法的な形で残すことが、残された人への最大の配慮になります。
不安なことがあれば、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談してみましょう。法テラス(0570-078374)では、無料の法律相談窓口を提供しています。まずは一歩、踏み出してみましょう。